2025.12.25

活用ノウハウ

複数診のクリニックで医師ごとの診療件数に偏りが出てしまう―対策はできるのか?

テーマ

今回は、「複数の医師で診療しているが、院長や特定の先生に予約が集中してしまい、ほかの先生の診察枠が空いてしまう」というご相談をいただきました。

予約システムは導入しているものの、「院長は予約が埋まっていて取れないと言われる一方で、ほかの医師は空き時間が出てしまう」「患者さんが医師を指定する前提になっており、診療件数のバランスが崩れている」といった悩みは、複数診体制のクリニックでは非常によく見られます。

では、このような医師ごとの診療件数の偏りは、仕組みとして対策できるのでしょうか。今回は、実際の予約運用や院内フローの事例を踏まえながら、考え方と具体的な対策を整理してお話しします。(患者動線DXコンサルタント:石井聡

なぜ複数診のクリニックでは医師ごとの診療件数に偏りが出るのか

── 複数の医師がいるのに、特定の先生に予約が集中してしまうのはなぜなのでしょうか?

石井:
多くのクリニックで見られる原因は、予約の入口の段階で「医師を指定すること」が前提になっている点です。院長やベテラン医師の存在が強く認識されていると、患者さんは無意識のうちに「この先生でないと診てもらえないのではないか」と感じます。その結果、院長の予約は常に埋まり、ほかの医師の診察枠は空いてしまうという構造が生まれます。これは医師個人の問題ではなく、予約設計と情報の出し方によって起こる偏りだと考えるべきです。

医師指定を前提にしない予約の入口設計

── まず見直すべきポイントはどこなのでしょうか?

石井:
一つ目のポイントは、予約時に「医師を指定するか、指定しないか」を明確に分けることです。WEB予約でも院内予約でも、「医師を指定する」「指定しない」という選択肢を用意し、指定しない場合は「最短で予約が取れる」「時間の融通が利く」といったメリットをきちんと伝えます。実際には、必ずしも医師を指定したいわけではなく、「早く診てもらえればよい」という患者さんも多く、そのような方は医師指定なしを選んでくれます。入口での設計次第で、予約の流れは大きく変わります。

待ち時間や待ち人数を見せて患者の判断を促す

── それでも院長希望が多い場合は、どう対応すればよいのでしょうか?

石井:
二つ目の対策は、待ち時間や待ち人数を患者さんに見せることです。来院時や受付のタイミングで、「院長の場合はこれくらい待つ」「ほかの医師であれば待ち時間が短い」といった情報を提示します。そうすることで、患者さん自身が「今日はそこまで待ちたくないから別の先生でもよい」と判断できるようになります。無理に誘導するのではなく、判断材料を提示することが重要です。

検査後の診察振り分けを属人化させない

── 院内での医師の振り分けは、どのように考えるべきでしょうか?

石井:
三つ目は、検査後の診察医の振り分けを、スタッフ個人の経験や勘に頼りすぎないことです。多くのクリニックでは、検査後に看護師やスタッフが状況を見て医師を割り振っていますが、これは属人化しやすい部分でもあります。ここで有効なのが、事前問診の活用です。問診内容をもとに、「定期的な診察なのか」「これまでと違う症状があるのか」といった情報を整理し、ある程度のタグ付けを行います。これにより、「今回は院長でなくても対応可能」「このケースは経験豊富な医師が対応すべき」といった判断がしやすくなります。

診療内容によってあらかじめ振り分けるという考え方

── 具体的には、どのような診療が振り分けしやすいのでしょうか?

石井:
予防接種や定期処方、症状が安定しているフォロー診察などは、あらかじめ特定の医師に振り分ける設計が可能です。一方で、これまでと異なる症状が出ている場合や、判断が難しいケースについては、院長や経験豊富な医師が対応するというルールを明確にします。この線引きを事前に決めておくことで、診療件数の偏りを抑えやすくなります。

院長の診察枠をあえて制限するという選択肢

── 院長の診察枠は、制限したほうがよいのでしょうか?

石井:
ケースによっては、院長の診察を完全予約制にする、あるいは新規や当日診察を受けないといった設計のほうがうまく回ることもあります。その際は、「院長でなければ、来週のこの時間なら予約が取れる」といった代替案を必ず提示することが重要です。院長の負荷を下げつつ、ほかの医師の稼働を上げるためには、診察枠の設計自体を戦略的に考える必要があります。

医師ごとの診療件数の偏りは仕組みで是正できる

── 最後に、複数診クリニックの運営者に伝えたいポイントは何でしょうか?

石井:
医師ごとの診療件数の偏りは、個々の医師の問題ではなく、予約の入口設計と院内動線の問題です。医師指定の扱い方、待ち時間の見せ方、問診を活用した振り分け、院長の診察枠の設計などを組み合わせることで、患者満足度を下げずに院内全体のバランスを整えることができます。複数診体制だからこそ、「誰が診るか」を仕組みとして整理することが、安定したクリニック運営につながります。

本記事を解説した専門家

患者動線コンサルタント

株式会社レイヤード

石井聡

いしい さとし

得意な診療科目:眼科、小児科、皮膚科、内科

医療IT業界において約20年にわたり、介護保険のシステム開発、大規模病院向けの業務改善ソリューション提案など、医療機関の多用な課題解決に携わってきた実績をもつ。
近年は、全国400以上のクリニックに対し、予約システムをはじめとするクラウド型サービスの導入支援を実施。クリニックの業務フローを俯瞰し、現場の導線改善・業務効率化・患者体験の向上を実現する支援に注力している。医師・スタッフ・患者それぞれの立場を考慮したバランスのとれた改善提案が強み。


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レイヤードでは、院内/院外の患者動線設計・改善に関する無料の相談会を随時開催しています。
本相談会は、オンライン面談にて対応させていただきます。
また、クリニック経営者/スタッフ、開業予定医師のみ対象とさせていただきます。
※対象外の方からお申し込みをいただいても対応できませんのでご了承ください

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編集後記

複数医師体制のクリニックで起きやすい「医師ごとの診療件数の偏り」について、予約の入口設計や待ち時間の見せ方、問診活用など、仕組みで改善する考え方と具体策を解説します。

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