2025.08.13
活用事例
クリニック経営を圧迫する人件費 - データで示す無人受付による医療事務の省力化と収益メリット

クリニック経営において、人件費は最も大きな固定費であり、収益に直結する重要なコスト項目です。
なかでも医療事務の人件費は、全体に占める割合が比較的大きく、業務改善は経営上の重要課題と言えるでしょう。
本記事では、クリニックにおける医療事務の人件費の実態を踏まえ、無人受付ソリューションによる業務削減効果と、それがもたらす収益メリットについて具体的に解説します。
1.人件費はクリニック最大の固定費─経営を圧迫する構造的課題
人件費とは、給与や賞与に加え、法定福利費や各種手当など、スタッフにかかるすべての費用を含みます。クリニックの固定費の中でも最も大きな割合を占め、経営に与える影響は極めて大きい項目です。
本章では、クリニックを経営するうえで把握しておきたい人件費率について、公的な統計データをもとに現状をみていきます。
-人件費率の相場、適正値は?
一般的に、クリニックにおける人件費率は、15~25%程度が適正値とされており、25%を超えると要注意とされています。
ただし、診療科やクリニックの規模、院内処方の有無などによって必要な人件費は変わりますので、一律に判断するのではなく、収益構造や体制に合わせた目安を設定することが重要です。
-実際の人件費率はどの程度か?─公的データからみる現状
実際の人件費率はどれくらいなのでしょうか。
厚生労働省が実施した「第24回 医療経済実態調査(令和5年度)」の結果をベンチマークとして、クリニックの人件費率の実態を確認してみましょう。
以下は、無床クリニック医業収益における、事業形態別の人件費率のデータです。

調査によると、個人クリニックでは人件費率が医業収益の24.6%、法人クリニックでは49.0%にのぼります。人件費は、医業・介護業界の費用全体の中で最も大きな割合を占める固定費であり、利益を圧迫する主因となっています。
とくに、法人クリニックでは、収益の約半分が人件費に充てられており、経営に与える影響が非常に大きいことがわかります。
法人クリニックでは、院長や役員の報酬も人件費に含まれるうえ、事務や看護職に加えて管理部門などの人件費も発生するため、個人クリニックに比べて高くなる傾向があります。
-簡単に削れない人件費─サービスの質とのジレンマ
クリニックにおける人件費は、単なるコストではなく、医療サービスの質を支える基盤そのものです。
人件費率が高すぎると経営を圧迫しますが、逆に圧縮しすぎると、スタッフの質やモチベーションの低下、患者対応力の低下といったサービスの質の悪化につながる可能性があります。
スタッフ1人ひとりにかかる負担が増えれば、離職やチームの空中分解にもつながりかねず、人件費の圧縮がかえって再採用コストや教育負担の増大を招くリスクもあるのです。
こうしたジレンマを踏まえると、単なる人員削減ではなく、業務支援ツールによる業務代替・省力化が現実的な選択肢となります。
2.クリニックで最も人件費がかかる職種は?

次に、人件費の構造を職種別にみてみましょう。
以下は、「第23回医療経済実態調査 (医療機関等調査)のデータ分析」で報告されている、人件費の職種別の配分状況です。

-「事務職員」は、看護職員に次ぐ高コスト職種
法人クリニックでは、院長の人件費(約4割)が目立ちますが、これを除いたスタッフ人件費に限定して見ると、個人・法人ともに「事務職員」は看護職員に次ぐ第2位の人件費率となっています。
そのため、事務職の業務を省力化し、人件費を削減することができれば、クリニック経営に与えるインパクトは大きいと言えるでしょう。
医療事務の担う受付・会計・保険証確認・問診案内などの業務は、ルーティン性が高く自動化・効率化の余地が大きいため、ITツールの導入により工数の削減が期待できます。
-個人クリニックでは、「事務職員」人件費が3分の1以上を占める
医療事務には、受付・会計・レセプト・電話対応など多岐にわたる業務が集約され、負担が集中していることが背景と考えられます。
とくに、限られた人員で診療を回す小規模クリニックでは、急な患者対応や繁忙時に時間外勤務が発生しやすく、その残業代が人件費をさらに押し上げる要因となっているケースも少なくありません。
こうした構造的な業務負荷を軽減するうえでも、ITツールによる業務効率化は、コスト削減と労務改善の両面で有効な打ち手といえるでしょう。
3.医療事務の人件費はどれくらいかかっているのか?

クリニックの人件費の中でも大きな割合を占める医療事務ですが、実際にどれくらいの人件費がかかっているのでしょうか。
-正社員(常勤)の人件費
以下は、「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」のデータで報告されている、クリニック医療事務の正社員(常勤)一人当たりの平均給与額のデータです。

※人件費は、事業者が負担する法定福利費(社会保険料、雇用保険、労災保険など)等のコストを含めて試算
※上記データは、全国平均。都市部、地方など地域差を考慮する場合は、-5~+10%程度を目安として試算
個人クリニックの正社員医療事務の総人件費目安は 約332万〜346万円、法人クリニックでは 約366万〜382万円 となっています。
法人クリニックの方が年間で約30万〜36万円程度高いのは、スタッフ規模や給与体系・福利厚生の充実度、都市部の法人クリニック比率が高いこと等が影響していると考えられます。
-パートスタッフの人件費
パート勤務は、時給水準や勤務日数によって人件費が大きく変動するため、勤務形態(社保加入・扶養内)とエリア(都市部・地方)別に分類して整理しています。
以下は、クリニック医療事務のパートスタッフの給与、および人件費の目安です。

※都市部:東京、大阪、愛知、神奈川などの平均時給 ≒1,284円
※地方:全国平均時給を下回る都市部平均時給 ≒ 1,157円
都市部と地方では時給水準の差はあるものの、いずれの地域でも扶養内か否かで人件費は大きく変わります。扶養内ライン(月8.8万円/週20時間程度)を超えると、年間人件費は約2倍に跳ね上がるため、勤務時間・日数の設計が、人件費管理の重要ポイントとなります。
4.無人受付ソリューションによる医療事務の工数削減効果

本章では、無人受付ソリューションによる医療事務の業務省力化効果を具体的な数値で示します。
弊社で実施した医療機関での検証結果では、無人受付ソリューションの導入により、患者1人あたりの受付対応時間を約45%削減できることが確認されました。※下図参照

患者1人あたり225秒(3分45秒)の対応時間を削減できた場合、仮に患者数が1日に50人のクリニックだと、1日約3時間の業務時間を削減できます。
年間で考えると、約720時間の工数削減に相当します。
5.医療事務の工数削減がもたらす収益メリット
年間で720時間の受付業務の工数削減は、クリニックの経営にどれほどの影響をもたらすのでしょうか。
人件費の削減効果を勤務モデル別に可視化していきます。
-正社員モデルの場合─月10時間の残業削減で年間約24万円のコスト削減

正社員の場合、所定労働時間に対する給与は固定で発生しますが、無人受付ソリューションの導入により医療事務の受付業務が省力化されることで、日々の業務負荷が軽減され、残業発生を抑えることが可能になります。
仮に、1人あたり月10時間の残業を削減できた場合、年間で以下のような人件費圧縮効果が見込まれます。

このように、正社員1名あたり年間20万円以上の人件費圧縮効果が見込まれ、複数名体制での受付運用を行っているクリニックでは、さらに大きな効果が期待できます。
仮に利益率が20%で、年間売上が5,000万円のクリニックの場合、年間20万円の人件費削減は、100万円の売上増と同等のインパクトになります。
-パートモデルの場合─スタッフ0.5~1.5人分の工数削減

無人受付ソリューションによって削減できる720時間分の受付業務の対応工数は、パートスタッフ0.5~1.5人分の年間勤務時間に相当(※)します。
※患者数が1日に50人のクリニックで、患者1人あたり225秒(3分45秒)の対応時間を削減できた場合

-医療事務工数削減による経営メリット
年間720時間分の受付業務の対応工数を削減できれば、クリニックの経営にさまざまなメリットが生まれます。
①働き方・労働環境
・パートスタッフの時短勤務への切り替えが可能になる
・残業時間を削減できる
・勤務環境の改善により、離職率の低下・定着率向上につながる
②シフト・人員配置
・ピーク時間帯に人を集中させ、閑散時間帯は少人数など人員配置を最適化できる
・少人数体制でも安定した運営が可能になる
・急な欠勤や繁忙時にも対応しやすくなる
③採用・外注コスト
・単発採用やスポット勤務への依存を減らせる
・新規採用の必要性が下がり、採用・教育にかかる手間・コストを抑制できる
また、年間720時間の受付対応工数は、パートスタッフの人件費で換算すると、約100万円分の人件費に相当します。

無人受付ソリューションの導入により、繁忙期のパートスタッフのスポット採用や残業が必要なくなった場合、このような人件費削減効果も期待できます。
6.まとめ
クリニック経営において、医療事務の人件費は、全体に占める割合が比較的大きく、業務改善の影響が経営に直結しやすい領域です。
さらに、ルーティン業務も多く、業務の標準化やITの活用による効率化が進めやすい職種でもあるため、無人受付をはじめとする支援ツールの導入は、人件費の最適化や負担軽減につながる有効な手段といえます。
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