2025.06.13

活用事例

電子カルテの音声入力とは?導入メリットや選び方のポイントまで徹底解説

診察で説明する医師
テーマ

診察が終わったあと、電子カルテの入力に追われていませんか?
そのような負担を減らす方法として注目されているのが、診察中に録音ボタンを押すだけでカルテを作成できる「音声入力による電子カルテ作成」です。

とはいえ、「本当に正確に記録できるの?」「医療用語は認識してくれるの?」といった不安や、「どんな製品を選べばいいのか分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、電子カルテの音声入力が実際にどんなものか、現場での使われ方や導入のメリットに加え、導入時に確認しておきたい選び方のポイントまで、わかりやすく解説していきます。

1.電子カルテの音声入力とは?

電子カルテの音声入力とは、医師と患者の診察会話を文字起こしし、自動で電子化・テキスト化(カルテ作成)する機能です。
キーボード入力の手間を省けるため、診察に集中しやすく、業務効率化や患者満足度の向上にもつながると期待されています。

さらに、AIの発達により、録音した内容をただテキスト化するだけでなく、自動で整理・構造化することも可能です。本章では、電子カルテの音声入力システムの主な2つの機能について紹介します。

音声認識と文字起こし機能

医師と患者の会話を録音し、会話内容をそのままテキスト化します。
医療用語に特化した音声認識エンジンを搭載しているシステムであれば、専門用語や略語も認識できるため、再入力の手間も少なく、診療内容をより正確に記録できます。

また、診察時の雑音などのノイズを除去したり、発言を時系列に整理する機能もあり、現場での使いやすさに配慮されたシステムも多いです。

SOAP形式への自動変換機能

文字起こしされた診察会話は、AIによりSOAP形式(Subjective/Objective/Assessment/Plan)でカルテ入力用の文章へ自動変換できます

患者との会話内容から、患者の訴え(S)、医師の診察所見(O)、診断(A)、治療方針(P)などをAIが判断し、自動的に振り分け、カルテを作成します。
もちろん、必要に応じて修正したり、医師の普段のカルテ入力スタイルに沿った要約形式で分類・整理することも可能です。

2.電子カルテ音声入力の活用シーン

笑顔の患者

電子カルテの音声入力は、外来での診療はもちろん、システムによっては、在宅医療や往診、災害時の現場など、院外でも活用できます。

外来診療での活用

電子カルテの音声入力を活用することで、医師はキーボードに目を落とすことなく、患者と目線を合わせたまま診察ができます。
診察会話がリアルタイムで記録され、カルテ作成も自動でされるため、診察に集中しやすく、患者とのコミュニケーションの質の向上にも貢献します。

また、長時間にわたる説明やカウンセリングの内容も記録・要約できるため、後からの振り返りや、新人スタッフへの教育資料としても有用です。

在宅診療や外出先での活用

患者宅や介護施設など院外で行われる在宅診療では、カルテ入力のタイミングや精度が課題になりやすい場面です。
音声入力を活用すれば、スマホやタブレットを使ってその場で録音・記録が可能です。帰院後にまとめて入力する必要がなくなり、転記ミスや入力漏れの防止につながります。

また、診察中の記録をAIが自動で整理することで、移動中の隙間時間にカルテ作成を完了でき、1日の診療効率が大きく向上します。

3.電子カルテ音声入力の3つのメリット

パソコンをみて考える医師

音声入力による電子カルテの作成は、診察業務の効率化だけではなく、診療の質や正確性の向上、患者満足度の向上にも貢献します。

①カルテ作成にかかる時間を大幅に短縮できる

音声入力を活用することで、これまで診察後にまとめて行っていた電子カルテ入力の多くを、診察中に完結させることが可能です。
診察中の会話が自動でテキスト化され、さらにSOAP形式で分類されることで、医師は必要な確認・調整のみで記録を完了できます。

カルテ作成にかかる時間が大幅に短縮できることで、1日あたりの診療件数の増加や、医師の残業削減にもつながります。

また、音声入力は、クラークの業務負担軽減にも貢献します。患者対応や検査オーダーなど多忙な業務を抱えるクラークにとって、録音された内容がSOAP形式で整理されていることで記録業務の正確性と効率が大幅に向上します。

②診療の質や正確性が向上する

従来の手入力では省略されがちだった患者の細かい訴えや経過も、音声入力では会話をそのまま録音・記録できるため、より充実したカルテが作成できます。
さらに、AIがSOAP形式に分類・要約する機能により、見直しや追記も容易です。

こうして構造的に整理された記録は、誰が見ても分かりやすい形で残るため、医師だけでなく看護師やクラークなど、クリニック全体での情報共有がスムーズになります。

チーム内の連携もしやすくなり、患者からの問い合わせへの対応や処置も迅速に行えるようになることで、診療の質や正確性の向上につながります。

さらに、録音データそのものが残るため、診療後に患者とのやりとりを確認することも可能で、「言った・言わない」といったトラブルの防止にも役立ちます。

③患者とのコミュニケーションが深まる

キーボード入力が不要になることで、診察中に目線を外すことなく、患者との会話に集中できます。

実際に、電子カルテの音声入力機能をもつボイスチャートを導入したクリニックでは、「診察中の入力作業が減ったことで、患者の表情や反応に気づきやすくなった」「話をよく聞いてもらえたと患者からの評価が上がった」といった声もあり、医師側・患者側の双方にプラスの効果が見られます。

特に精神科のように、言葉のやり取りそのものが診療の中心となる診療科では、タイピングによる思考の中断がなくなることで、患者との関係性(ラポール)形成や診察の質が向上する傾向があります。

4.電子カルテの音声入力を導入する際の3つの注意点

資料をみて考える医師

電子カルテの音声入力は、クリニックの業務効率化に非常に有効な手段ですが、導入にあたってはいくつかの注意点も存在します。
本章では、導入時に特に注意したい3つのポイントについて解説します。

①変換の遅延や誤認識への対策

近年、AI技術や音声認識エンジンの精度は向上していますが、誤認識や変換の遅延といった課題もあります。
たとえば、診察室の雑音、医師や患者の話し方の癖、マイクの性能などが要因で、意図と異なる内容に変換されることがあります。

こうした誤認識がそのままカルテに反映されてしまうと、診療記録の正確性に影響を及ぼすおそれがあるため、人による確認・修正の工程が重要になります。

また、ネットワークの環境や会話のボリュームなどが要因で、文字起こしやAIによる変換に時間がかかる場合もあります。特に運用初期は、時間的に余裕を持った運用設計や段階的な活用範囲の拡大などの工夫も必要です。

②チームでの役割分担と運用ルールの明確化

電子カルテの音声入力をスムーズに運用するためには、医師だけでなくスタッフを含めたチーム全体での役割分担と運用ルールの整備が欠かせません。以下は運用ルールの例です。

  • 医師が診療前に録音を開始し、診療終了後に音声入力を停止
  • 医療事務スタッフがAIで変換されたテキストを確認し、SOAP形式に沿って内容を修正
  • 医師が診療の合間や終了後に最終チェックと微調整を行い、カルテへ登録

このように、「録音・確認・修正・承認」の役割を明確に分担することで、手戻りや記録ミスのリスクが低減され、音声入力によるスムーズなカルテ作成が可能になります。

また、運用マニュアルの整備や研修の実施により、音声入力の基本操作やテキスト確認のポイントをスタッフ間で共有しておくことも重要です。

③患者プライバシーの保護

電子カルテの音声入力では、医師と患者の診察会話が録音・記録されるため、プライバシー保護とデータ管理の徹底が不可欠です。
まず重要なのは、録音を行っていることの事前説明です。

  • 録音の目的がカルテ作成に限定されていること
  • データは暗号化され適切に管理されること
  • 診療以外の目的には使用しないこと

などを、患者に説明するようにしましょう。必要に応じて、院内掲示やパンフレットでの周知も効果的です。

実際に音声入力を導入している医療機関の中には、録音に抵抗感を示す患者に対し、音声入力を使用せず手入力で対応するといった柔軟な運用を行っているケースもあります。プライバシーへの配慮は、患者との信頼関係を築くうえでも極めて重要です。

参考:厚生労働省_医療情報システムの安全管理に関するガイドライン

5.電子カルテの音声入力システムを選ぶ際の4つのポイント

笑顔の医師

電子カルテの音声入力システムの種類も増えてきましたので、「何を基準に選べばいいのか分からない」と感じる方も多いのではないでしょうか。
本章では、システムを比較・検討するうえで押さえておきたいポイントを4つ紹介します。

①音声認識やAIの精度

音声認識の精度は、音声入力システムを選ぶうえで最も重要な要素のひとつです。
特に医療現場では、「BP(血圧)」「SpO₂(酸素飽和度)」といった略語や、診療科ごとに異なる専門用語が日常的に使われるため、これらを正確に認識・変換できなければ、かえって修正作業が増えて業務効率が損なわれてしまいます。

そのため、医療特化型の音声認識エンジンが搭載されているかを確認することが重要です。さらに、雑音を除去したり話者を識別したりする機能があれば、医師と患者の会話を正しく分離して記録でき、誤変換や記録ミスのリスクを低減できます。

また、近年のシステムにはAIによる学習機能を備えたものも多く、話し方の癖などで学習していくことで、使えば使うほど認識精度が向上します。導入直後は変換ミスが見られることもありますが、一定期間の運用を経ることで、精度の向上と入力作業の負担軽減につながる場合もあります。

音声認識の精度だけでなく、運用開始後にどれだけ賢くなるか(AIの学習性能)も選定時の比較ポイントとして意識すると良いでしょう。

②既存電子カルテとの連携性

音声入力システムを導入する際には、現在使用している電子カルテとの連携性を確認することをおすすめします。
音声入力システムの中には、特定の電子カルテとしか連携できないものもあり、互換性がない場合、基本的には、テキストのコピー&ペーストが必要になります。

SOAP形式で自動構造化された情報をそのまま貼り付けられる仕組みであれば、大きな手間にはなりませんが、連携性に違いがあることは意識しておきましょう。また、今後電子カルテの入れ替えを予定している場合は、将来的な対応範囲やアップデートの互換性も確認しておくと良いでしょう。

③操作性やモバイル対応の可否

音声入力システムを選ぶ際には、診療中でも直感的に使える操作性が欠かせません。
機能が充実していても、起動や入力、修正作業に手間がかかれば、かえって医師やスタッフの負担となります。

また、訪問診療など院外での対応を実施しているクリニックは、スマートフォンやタブレットなどモバイル端末で使用できるかも重要な比較ポイントです。操作性を見極める際は、以下の点をチェックしておくとよいでしょう。

  • 起動や操作がシンプルでわかりやすい
  • 手入力との併用ができる(修正作業が容易)
  • モバイル端末(スマートフォン・タブレット)に対応している

システムによっては、診療開始と同時に録音が始まる自動起動機能や、録音データをその場で確認・編集できるインターフェースを備えているものもあります。
実際の診療環境に合わせて、現場でストレスなく扱えるかどうかを試すことが大切です。

④セキュリティ対策

電子カルテの音声入力では、患者の診療内容が録音・保存されるため、適切なセキュリティ対策が不可欠です。
システムのセキュリティ対策については、以下点をチェックするようにしましょう。

  • 録音データの暗号化やアクセス制限の設定は可能か
  • 厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に沿っているか
  • サーバーの管理体制・保管場所は問題ないか

参考:厚生労働省_医療情報システムの安全管理に関するガイドライン

なお、患者情報を扱う以上、どれほど対策がしっかりしたシステムを導入しても、運用する人の意識とルール整備が伴わなければ、セキュリティ対策として不十分です。

クリニックのスタッフ全体で運用ルールを共有し、ヒューマンエラーを防ぐ体制づくりも同様に重要です。

6.電子カルテの音声入力システムなら「ボイスチャート」

本記事では、電子カルテの音声入力について、活用シーンや導入メリット、システム選定のポイントまでご紹介しました。とはいえ、「うちの診療スタイルに合うか分からない」「どの製品が最適なのか迷っている」といったお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

レイヤードでは、電子カルテの音声入力に対応した『カルテ自動化AIボイスチャート』をご提供しています。

診察会話の文字起こしはもちろん、AIによるSOAP形式への自動変換、モバイル対応など、今回ご紹介した機能を搭載しておりますので、電子カルテの音声入力やAI導入をご検討中の方は、ぜひ一度ご相談ください。

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